起業家必見!人材採用における「やばい人」の見抜き方と人で倒産しないコツ
労務系弁護士の向井蘭氏に人材採用のコツなどをインタビューしました。
スタートアップにおいて、人材採用には大きな意味があります。社員を取らないと会社は成長していけません。
良い人材を獲得することができれば、会社の成長に大きく貢献してくれます。
しかし、良い人材を採用過程で見極めることは難しく、上手く採用できても離職してしまうリスクがあります。
そのため、採用に苦戦している会社がとても多いです。
また、採用シーンだけではなく、なかには採用した社員との紛争に苦しむ経営者も多く存在します。
今回は会社成長の鍵となる人材戦略について、「社長は労働法をこう使え!」の著者で自身も弁護士事務所の経営や、リーガルテック系のスタートアップ企業の役員をしている向井蘭弁護士に聞いてみました。
1975年山形県生まれ。東北大学法学部卒業。2003年に弁護士登録。現在、杜若経営法律事務所所属。経営法曹会議会員。企業法務を専門とし、企業法務担当者向けの労働問題に関する著書やセミナーも多数。
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この記事の目次
スタートアップにおける社員の必要性
向井:会社は「人」で決まります。社長の右腕だったり、忠誠心や能力の高い社員をどれだけ採用できるかが会社の将来を決めるといっても過言ではありません。
それができないと社長業は大変ですし、規模も小さいままで終わってしまいます。しかし、人材採用には落とし穴が多いのも事実です。
昔に比べると若者の数が減っており、就職氷河期や団塊世代のようにいくらでも人が取れる時代ではありません。
また、労働法も厳しくなっていることなどから業務も高度化しているため、昔より人材採用の難易度は上がっています。
向井:スタートアップの場合は、そもそも社員がいるのか?というところから考えないといけません。
たとえば、弊社はオンライン秘書を使っています。オンライン秘書であれば時給は高いですが、マネジメントコストがかかりません。
また、人を増やしてしまうとAI化の障害になることがあるため、デジタルツールを活用して人を使わないという選択肢もあります。
必ずしも頭数を揃える必要はなく、そういった考えは時代遅れになりつつあるのです。
一人でできるように全て外注化するのが究極形で、今後は必要最低限の社員で運営していく経営が求められるでしょう。
向井:社長で人が嫌いというタイプの人はまれなので、どうしても人を集めて増やしたがる傾向があります。
しかし、採用母数を半分にすれば失敗の確率も半分になります。採用や組織作りは大切なことですが、自己目的化してはいけません。
・社長はそもそも人を増やしたがる傾向
・人が増えると比例してコストやトラブルも増える
外部化すると変動費にできますし、固定費ではなくなります。固定費が高いと売上減少に弱く倒産しやすくなりますよね。
変動費率が高いと、売上が減少してもコストは減るので環境変化に強いというメリットになります。
すぐに離職されてしまうといった人にまつわるトラブルを抱えなくて済むので、社長からするとストレスが減ることは間違いありません。
採用しすぎて苦しむ社長も多く見てきています。採用の前に外注化や自動化、そもそもやるべき仕事なのかを判断していきましょう。
・変動費にできる=倒産しにくい
・人にまつわる社長の労力やストレスが減る
・だめならやめられるのでトライしやすい
・コアな業務に集中すると利益が上がりやすい
【採用する前に】
□ そもそもその仕事は受けるべきか?
□ 今のメンバーで効率化してこなせないか
□ 自動化できないか
□ 外部化(アウトソーシングできないか)
□ パートなどでもできないか
→それでもできないような重要な仕事を採用で正社員にやらせよう!
人材採用で失敗しないためには「ルール」を決めることが大切
向井:社長が採用の最終意思決定者である場合がほとんどだと思います。しかし、社長が判断すると失敗するケースは多いです。
なぜなら、社長は自分自身の判断に自信がある人が多いため、主観的に判断してしまうからですね。
弁護士として相談を受ける中で「採用に失敗して揉めた」というケースも多く、リスクなどを考慮せずに社長が主観的に決めてしまい、後で苦労するということもあります。
社長は「好き嫌い」ではなく「会社にとって合う・合わない」で判断しましょう。
とはいっても人間なので、感情に流されることもありますよね。感情に流されないためには、ルールを決めておくことが大切です。
また、社長が「お友達」を入れてしまうケースも失敗の素になります。判断が歪みやすい上に指示命令系統が明確ではないため、あとで問題になるケースが多いです。
向井:たとえば、投資でもルールを決めることによって勝率が上がります。
日本を代表する投資家の方と仕事で関わったときに、とても驚いたことがあります。
それは、一見パッション(感情)が強いように見えて投資の細かいルールがあり、この条件であれば進む・撤退するなどの基準が明確なことです。
ルールを設けることで、具体的に2つのメリットがあります。
1つ目は、やっていくうちにデータが蓄積するため、成功失敗の再現ができることです。
2つ目は、組織を仕組みで動かすことができるようになるということです。
この2つの理由から組織には「ルール」が必要で、とくに採用シーンにおいては重要だということが分かりますよね。
投資でも採用でもマネジメントでも「感情で決めると損をする」ものです。
優秀な人材を採用するためのコツとは
向井:まず、導入した方がよいのは「適性検査」です。これだけでもかなりバランスの取れた見方ができるようになります。
適性検査をやると意外に分からない面が見えてきます。
面白いことに私は日本と中国の両方で適性検査を導入していますが、日本も中国も適正検査は有効だということが分かっています。
ちなみに有名なSPIなどの検査よりもマイナーなものがおすすめ。なぜなら、SPIのようにメジャーなものだと対策本があるからです。
弊社の場合は、DPI・ダイヤモンド社が出しているものを使っています。
適性検査の良し悪しというよりも、対策が出回っていない信頼性が高いものを導入するのが最適です。
向井:採用で成功している会社では過去の成功パターンを分析して、この質問に対してこの回答をした人を採用すると決めているケースがあります。
入社後に活躍している人の面接時の回答を参考に、成功するタイプを逆算して採用するわけです。
自社で適性検査を作っているところもありますが、採用で成功している会社はそうした独自のノウハウを工夫しています。
データが溜まってくると採用にフィードバックできるので、好循環を回せるのです。
プラスの質問だけでは判断しにくいので、マイナスの質問に対する回答をみることで判断しやすいです。
たとえば「頭にきた経験」などマイナスの体験を聞くと、相手の人間性が出ます。こういった思いがけない質問は、相手の本音が出るので有効ですね。
また、専門系の人は実技試験を行うのもおすすめ。A4用紙1枚分のレポートでも、見事にその人の能力が出るものです。
注意すべき人物の特徴と採用シーンでリスクヘッジする方法
向井:自信がある人は給与が高めであれば、1年契約で様子を見るという提案にも意外と難色を示さないケースが多いです。
一方で、正社員雇用をやたら求めてくる人は要注意です。自信がなくて会社にしがみつきたい人という可能性があります。
もちろん、そうではない可能性もありますが、そういった傾向が強いということは念頭に置いておきましょう。
向井:労務系弁護士の立場からすると、一番リスクが少ないのは新卒採用でしょう。
ある程度年齢を重ねている方だと知恵がついてくるので、揉めやすい上に揉めたときも大変な場合が多いです。
新卒採用のメリットは2つあります。1つはリスクが少ないということ。2つ目はロイヤリティの高い社員が育てられるということです。
ただし、毎年やらないと難しいので、スタートアップにはハードルが高いかも知れません。大きな会社にとってはおすすめの方法です
経営スピードを加速するにはVC活用が有効
向井:海外で事業をすると分かりますが、日本の会社は利潤追求の度合いが低いですね。
やはり、海外だと凄まじい勢いがあります。結果を出すという姿勢に対してシビアです。
日本の場合は、田舎で暮らしているようなスピード感といったところでしょう。
利益追求は日本だと悪いイメージもありますが、効率を上げて無駄の多い組織を作らない上でも大切なことだと思います。
向井:私は就業規則を自動化するリーガルテック系のスタートアップの社外取締役をしています。
VCなど外部の圧力があるといいのは、社長が自分の好みで全て決められず規律が生まれることです。
いわば家庭教師をつけているようなもの。投資家と揉めるケースもありますが、経験の多い投資家に細かく指摘されるのは大きな成長に繋がります。
まとめ
現代ではデジタルを活用して、不足した人材をカバーすることもできます。まずは、採用する必要があるのか?ということから考えるようにしましょう。
人材採用やマネジメントは大変ですが、会社のために働いてくれる社員は宝でもあります。
ただ、基本を押さえていない採用の失敗があまりにも多いです。感情に流されず、基本を押さえて採用を成功させましょう。
社長は労働法をこう使え! 向井蘭 ダイヤモンド社
労働法は社員だけではなく、経営者も上手く活用することで有利になるシーンが多いです。
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(取材協力:
杜若経営法律事務所/向井蘭)
(編集: 創業手帳編集部)